最初にことわっておきますが、これは怪獣映画ではありません。
2010年制作のイギリス映画。
大推薦のこの映画、これを書くに当たって色々評価を調べたのですが、AmazonやYahoo!映画のあまりに低い評価に正直驚きました。
え!10秒観ただけで引き込まれてしまった私は変人なのかな?。Blu-rayも購入し何度も鑑賞して、楽しんでいます。
邦題の「地球外生命体」を見て、パニック映画だと誤解して、その期待を裏切られたのでしょうか。「インデペンデンスデイ」シリーズのように派手に戦うシーンは、全くありません。今の映画好きと宣言している人々は、大手資本制作のマーベル映画などが好きな人が多いので、この映画に戸惑うのは分かる気がしますが。
「モンスターズ」は、一種のロードムービー(旅の途中で起こる様々な出来事の物語)として観るべき映画でだと思います。地味ですがヴィム・ヴェンダース監督の「パリ、テキサス」のように鑑賞して欲しい作品です。
この作品は、俯瞰的な視点ではなく主人公たちの視点を通して語られるため、知らず知らずのうちに物語に引き込まれてしまいます。
休憩中に森の中から聞こえてくるモンスターの鳴き声、中盤までモンスターは、主人公達の前に姿を現すことなく物語は進んでいきます。
そしてこの映画が優れているという証拠は、この監督この映画1本で「ゴジラ」の監督に大出世しているという事実で証明されました。
Blu-rayのケースの裏にある「クエンティン・タランティーノ、ピーター・ジャクソン、リドリー・スコットといった世界のトップ・クリエイターが絶賛した、」
との記載がほんとであれば、凄いですね。
私:☆☆☆☆(4)Amazon :☆(30%)Yahoo!映画:☆☆(2.7)、こっこれはひどい!
1.キャスト
・アンドリュー・コールダー: スクート・マクネイリー
この人どこかで見たことあるな、と思っていたら「ワンス・アポン・ア・タイム・イン・ハリウッド」に出てましたね。
・サマンサ・ワインデン: ホイットニー・エイブル
主要な登場人物はこの2人だけ、スクート・マクネイリーとホイットニー・エイブルは、2010年に結婚してたんですね。この映画の二人の逃避行では、立場が対照的な二人が、徐々に惹かれ合う様子が自然に描かれてます。またフェリー売り場で交渉するおじさんが、実に抜け目なく狡猾で印象的ですが、一般人だとしたら驚きです。一夜の宿を貸してくれるメキシコ人の女性と子供たち、ゲートに居る警察官などの自然な振舞が、かえって映画の現実感を引き立ててます。
2.制作
監督、撮影、脚本はギャレス・エドワーズ
メイキング映像で、実際監督自ら撮影したのを確認しました。ほんとに凄い奴です。
その上、殆どが手持ち撮影でした。才能があれば、創意工夫とセンスで、あのような画が撮れるんですね。
三脚をセットすると、その場の雰囲気が壊れるという彼の話には納得するところがあります。
私も、撮りたい光景はほんの一瞬だから、その瞬間を逃さないために、写真を撮る時は全部手持ちで撮ります。
監督の言葉、
「新しいレンズを試してみたかった。」
「既存の映画の作り方に不満を感じていた。」
「スタッフが多く、金ばかりかかって自由がない。」
3.見どころ
BBCやディスカバリーチャンネルの作品を手掛けていた監督のギャレス・エドワーズには、無駄なカットがなく、陰影の見事な素晴らしいカメラワークを見せてくれます。
自分がYouTubeを撮るなら、カット割りなどとても参考になります。
そして、とても美しく印象的な映像。
道路脇にある破壊された航空機の部品、沼にうち捨てられているM1エイブラムス戦車、信じられない程の高さの木に引っかかっている小型船、船の墓場の血のついた手形、山の上にある朽ちたホテルの廃墟など、色々な廃墟の映像が非常に効果的です。
「ゴジラ」でも、鉄橋の上で怪獣に待ち伏せを受けるシーン、主人公が都市に軍用機から降下するシーンなどに、この監督のセンスの良さが引き継がれてます。
4.ストーリー
NASAは、太陽系に“地球外生命体”の存在を確認。探査機がサンプルを採取したが、大気圏突入時にメキシコ上空で大破。それが原因となり地球外生命体が増殖し、メキシコの半分は危険地帯として隔離され、メキシコ軍とアメリカ軍の空爆が始まります。これらは、冒頭で映像ではなく字幕で説明されます。
偶然メキシコにいた新聞社のカメラマンが、社長からその令嬢を危険なメキシコからアメリカまで連れ出すように、依頼されます。
そして、フェリー乗り場がある街で最後の乗船券を盗まれた2人は、大金を払い国境まで陸路の行程を余儀なくされます。
驚くべきは、主人公2人の演技は殆どアドリブ、エキストラは、現地のたまたま居合わせた一般人とのこと。そのドキュメンタリー風の作風で、映像は前衛的、そして緊迫感、臨場感は半端ありません。
監督自身がVFXの技術者であるため、自宅地下室で作られたとは思えない視覚効果を得ています。
また主演のホイットニー・エイブルが、とっても可愛いのにも注目です。