この「春の嵐」は、今までのシリーズとは違い、初の長編として登場しました。今までの作品は、「小説新潮」に読み切りとして連載されていましたが、この「春の嵐」の連載は、一年に渡りました。
目次は、七つありますが、長編のため関連性があります。
そのため、読むとネタバレの危険がありますので、注意してください。
秋山父子の仲間たちが総動員!
そしてこの「春の嵐」の特長は、今まで出てきた登場人物総動員で秋山父子との熱い繋がりが見事に描かれています。個人的には、手裏剣の名手・杉原秀さんが大好きなんです。
また、杉本又太郎の家の裏手で、首つりをしようとしていた芳次郎のエピソードも、複雑にからみあってくるのです。
陰謀が渦巻くこの巻の始まりは、秋山父子夫婦のほんとに美味しそうな食卓の情景から始まります。
【主な登場人物】
■秋山小兵衛 かつての高名な剣客、今は隠居して郊外におはると住んでいる
■秋山大治郎 秋山小兵衛の息子。剣術道場を開いているが門弟は殆どいない
■おはる 小兵衛の下女であったが小兵衛に手をつけられて妻となる
■三冬 老中・田沼意次の隠し子で、女剣士。秋山大治郎の妻となる
■飯田粂太郎 飯田平助の子。秋山大治郎の最初の門人
■笹野新五郎 秋山大治郎の二番目の門人
■田沼意次 時の最高権力者で老中。三冬の実父
■生島次郎大夫 田沼家の用人
■弥七 小兵衛の剣術の弟子で、四谷伝馬町の御用聞き。女房は、料理屋を経営
■文蔵 弥七と親交がある御用聞き
■小川宗哲 小兵衛の友人で町医者
■傘屋の徳次郎 御用聞きの弥七の子分
■杉原秀 杉原左内の娘で、根岸流手裏剣の達人
■又六 鰻の辻売りをしている。素直で実直な男
■杉本又太郎 無外流の道場主。「狐雨」の事件から、めきめきと腕を上げる
■植村友之助 かつて秋山小兵衛の弟子で、逸材といわれた男
■為七 知的障害の中年のかわいそうな男
【春の嵐の目次】
1.除夜の客
秋山小兵衛とおはる、そして大治郎と三冬は、又六からもらった鯛と軍鶏で、和気あいあいとして団欒のときを過ごしていた。
ちょうどそのころ、幕府の旗本が辻斬りに殺害された。
その辻斬りは、「秋山大治郎」とわざわざ名乗っていた。
2.寒頭巾
その曲者は、今度は田沼意次の屋敷を訪れ、大治郎と面識のない門番を切った。
杉本又太郎は、秋山大治郎宅に年始に向かいその事を知る。飯田粂太郎、笹野新五郎と共に憤るが、今後は笹野新五郎が常に大治郎に付き添う事になった。
3.善光寺・境内
次に曲者が襲ったのは、松平越中守定信の家臣であった。常に田沼意次に敵対していた松平定信であったので、評定所も町奉行も、大治郎が犯人ではないと分かっていたが定信の追及を拒めなかった。
そしてまた、国元へ向かった松平定信の家臣が襲われた。
その後、執念の探索を続けていた傘屋の徳次郎は、大治郎そっくりな頭巾の侍を見つけた。
4.頭巾が襲う
いきなり、松平家の家来たちが大治郎宅にいた小兵衛と三冬を襲うが、反撃され、ほうほうの体で逃げていく。
そのころ、傘屋の徳次郎は、頭巾の侍を尾行して住居らしきものを突きとめた。
5. 名残の雪
秋山小兵衛は、かつて目をかけてくれた八代将軍・吉宗の御書院番頭の荒川大学信勝から、徳次郎が突きとめた旧・戸羽休庵邸に住んでいるものが、一橋家の庇護を受けていることを聞き、戸羽休庵旧宅に向かう。
6. 一橋控屋敷
秋山小兵衛は、又六と杉原秀に助けを求め、そして田沼意次に会いに出かける。
7.老の鶯
頭巾の侍との対決のため元長にいた秋山小兵衛は、またしても松平家の家臣達に襲われる。
その場に到着していた杉原秀がその場を引き受け、小兵衛は、対決の場へ向かうのであった。
「剣客商売 春の嵐」年譜
書籍名 | 発表月 | 表題 | 出版社 |
---|---|---|---|
剣客商売第十巻 春の嵐 | 1978年1月 | 春の嵐(長編) | 新潮社、新潮文庫 |