まさか秋山小兵衛、一度に二十人を相手にするのか??!
1987年10月刊行の本書、秋山小兵衛の年齢に池波正太郎が追い付いてきました。
この物語は、秋山小兵衛が突然目眩におそわれるとこから始まります。
これは、池波正太郎の実生活で起こったことではないかと感じるのは、私だけではないでしょう。
大切に読みたい長編です。
池波正太郎の小説が好きな理由のひとつは、決闘の描写です。
秋山父子は、ほとんど一刀で相手を切り伏せます。
よく時代劇や映画で、刀をチャリーンと打ち合わせる場面を観ることがありますが、あれをやると、どんな名刀でも刃こぼれをしてしまいます。
黒澤明の名作「椿三十郎」を観ていただくとわかりますが、椿三十郎は全ての相手を一太刀で切り伏せています。
名人は、刀で刀を弾かなかったはずです。
【主な登場人物】
■秋山小兵衛 かつての高名な剣客、今は隠居して郊外におはると住んでいる
■秋山大治郎 秋山小兵衛の息子。剣術道場を開いているが門弟は殆どいない
■おはる 小兵衛の下女であったが小兵衛に手をつけられて妻となる
■三冬 老中・田沼意次の隠し子で、女剣士。秋山大治郎の妻となる
■田沼意次 時の最高権力者で老中。三冬の実父
■弥七 小兵衛の剣術の弟子で、四谷伝馬町の御用聞き。女房は、料理屋を経営
■小川宗哲 小兵衛の友人で町医者
■傘屋の徳次郎 御用聞きの弥七の子分
■又六 鰻の辻売りをしている。素直で実直な男
■横山正元 牛込の早稲田町の町医者、無外流の剣術を遣う
■杉原秀 杉原左内の娘で、根岸流手裏剣の達人
【おたま】短編
「おや・・・?お前、どうした?」
秋山小兵衛がかわいがっていた白の牝猫・おたまが、一年ぶりにどこからか戻って来た。
そのおたまは、家には上がらず堀の上の細道に駆け上がり、甲高い声で一声鳴いた。
そしてまた戻って来て三回鳴くと、反転して堀の上に戻り小兵衛をみつめた。
その様子をみて小兵衛は、顔を引き締めおたまの後を追うのであった。
【二十番斬り】
秋山小兵衛の夢の中に、二十数年前に亡くなった妻のお貞が現れ手招きするのであった。
目が覚めた小兵衛は、突然めまいに襲われる。
それを見たおはるは、泣きながら町医者・小川宗哲を呼びに行った。
小川宗哲の診察を受け寝ていた小兵衛であったが、家の裏手の人の話し声で目が覚めた。
物置小屋の前に立っていた二人の侍を難なく撃退した小兵衛が納屋の中を確かめると、中にいたのはかつての門人・井関助太郎と幼い男の子だった。
傷を負った助太郎と男の子を大治郎に預けると、自宅に戻り再度の襲撃に備えた。
七人の侍の襲撃を受けた小兵衛は、また、めまいに襲われてしまうのであった。
「剣客商売 二十番斬り」年譜
書籍名 | 発表月 | 表題 | 出版社 |
---|---|---|---|
剣客商売第十五巻 二十番斬り | 1986年2月 | おたま | 新潮社、新潮文庫 |
剣客商売第十五巻 二十番斬り | 1987年4月 | 二十番斬り | 新潮社、新潮文庫 |
長編で、ネタバレになるので詳しく書きません。