池波正太郎の有名な三部作「剣客商売」「鬼平犯科帳」「仕掛人・藤枝梅安」のひとつで、
「剣客商売」が、恋あり人情ありで私が一番好きなシリーズです。
「剣客商売」は過去四回もドラマ化され、現在も「時代劇専門チャンネル」で観ることができます。
個人的には、北大路欣也版が一番好きです。
息子の大治郎を斎藤工(第一作~第五作)、田沼意次の娘三冬を杏(第一作~第四作)が演じています。
妻が「剣客商売」全巻を持って嫁入りしてきました。
当時なかなか見る目あるんだなあと感心した記憶があります。
夫婦で何度も読み返すので、表紙がボロボロになってしまいました。
池波正太郎の文章は無駄がなく、江戸の情景が自然に脳裏に浮かんできて、知らず知らずのうちに池波ワールドに引き込まれてしまいます。
当時のお菓子や食べ物についても、池波正太郎は造詣が深く、うんちくではなくさらりと江戸時代の庶民の生活を生き生きと描いています。
秋山小兵衛五十九歳、息子の大治郎二十四歳から物語は始まります。
主な登場人物
この登場人物たちがまた魅力的です。
■秋山小兵衛 かつての高名な剣客、今は隠居して郊外におはると住んでいる
■秋山大治郎 秋山小兵衛の息子。剣術道場を開いているが門弟は殆どいない
■おはる 十九歳、小兵衛の下女であったが小兵衛に手をつけられて妻となる
■佐々木三冬 老中・田沼意次の隠し子で、男装の女剣士。井関道場の四天王のひとり
■田沼意次 時の最高権力者で老中。三冬の実父
■弥七 小兵衛の剣術の弟子で、四谷伝馬町の御用聞き。女房は、料理屋を経営
■小川宗哲 小兵衛の友人で町医者
剣客商売の目次
第一巻には、七つの話があります。
1.女武芸者
秋山大治郎の道場に大垣四郎兵衛と名乗る立派な風采の武士が現れ、ある人の両腕を叩き折って欲しいとの依頼を持ってきたのだが、大治郎は追い返してしまった。
そしてそのことを父・秋山小兵衛に話した。
大治郎の前では平静を保っていた小兵衛であるが、信頼のおける御用聞きの弥七にいきさつを残らず打ちあけて調べてもらうことにしたのだった。
弥七によると、時の権力者・田沼意次の妾腹の娘に、大身の旗本・永井和泉守の息子との縁談が持ち上がっていた。
娘の名は、三冬といって十九歳かなりの剣の遣い手であった。
2.剣の誓約
ある日秋山大治郎のもとに、恩師・辻平右衛門に仕えていた嶋岡礼蔵が訪ねてくる。
柿本源七郎と真剣勝負の約定があり、大治郎に死に水をとってもらいたいというのだ。
3.芸者変転
座敷女中のおもとは、無頼御家人の山田勘介が石川甲斐守を強請にかけるという話を聞いてしまった。黙っていられなくなったおもとは、それを秋山小兵衛に話してしまう。
4.井関道場・四天王
井関道場は、井関忠八郎亡きあと四天王により運営されていた。
佐々木三冬は、実父・田沼意次から「秋山先生の御意見をうかがうように」と言われ、小兵衛を訪ねた。
5.雨の鈴鹿川
秋山大治郎は、嶋岡礼蔵の遺髪をたずさえて、礼蔵の実兄のもとへ旅立つ。
その帰り道、かつて一緒に修行していた井上八郎と出会う。
井上八郎は、敵持ちになっている恩義のある人の息子を助けにいくというのだが。
6.まゆ墨の金ちゃん
小兵衛と親交のある牛堀九万之助のところに、まゆ墨の金ちゃんと呼ばれる三浦金太郎が
訪ねてきた。話を聞くと、秋山大治郎の命を狙う剣客が動き始めているという。
7.御老中毒殺
雨宿りをしていた佐々木三冬は、田沼家の御膳番・飯田平助が摺りにあうのを見てしまう。
掏摸から取り返した紙入れの中身を見ると、そこには身分不相応な小判・十両と油紙につつんだ小さな包みがあった。
「剣客商売」第一巻年譜
年譜を作ってみました。
書籍名 | 発表月 | 表題 | 出版社 |
---|---|---|---|
剣客商売第一巻 | 1972年1月 | 女武芸者 | 新潮社、新潮文庫 |
剣客商売第一巻 | 1972年2月 | 剣の誓約 | 新潮社、新潮文庫 |
剣客商売第一巻 | 1972年3月 | 芸者変転 | 新潮社、新潮文庫 |
剣客商売第一巻 | 1972年4月 | 井関道場四天王 | 新潮社、新潮文庫 |
剣客商売第一巻 | 1972年5月 | 雨の鈴鹿川 | 新潮社、新潮文庫 |
剣客商売第一巻 | 1972年6月 | まゆ墨の金ちゃん | 新潮社、新潮文庫 |
剣客商売第一巻 | 1972年7月 | 御老中毒殺 | 新潮社、新潮文庫 |