シリーズ第四弾、老中・田沼意次の娘・佐々木三冬は、秋山大治郎に対する想いを強くしていくのですが、純朴な二人なのでなかなか先へ進まず、読む側としては、まだまだじらされます。
じらせますなあ。
そして「剣客商売 天魔」では、魔物に魅入られたと自ら信じる笹目千代太郎との対決があります。秋山小兵衛と大治郎親子は、この強敵にどのように対応するのか?
池波正太郎の術中に、まんまとはまってしまいましょう。
【主な登場人物】
■秋山小兵衛 かつての高名な剣客、今は隠居して郊外におはると住んでいる
■秋山大治郎 秋山小兵衛の息子。剣術道場を開いているが門弟は殆どいない
■おはる 小兵衛の下女であったが小兵衛に手をつけられて妻となる
■佐々木三冬 老中・田沼意次の隠し子で、男装の女剣士。井関道場の四天王のひとり
■田沼意次 時の最高権力者で老中。三冬の実父
■生島次郎大夫 田沼家の用人
■弥七 小兵衛の剣術の弟子で、四谷伝馬町の御用聞き。女房は、料理屋を経営
■小川宗哲 小兵衛の友人で町医者
■傘屋の徳次郎 御用聞きの弥七の子分
■又六 鰻の辻売りをしている。素直で実直な男
【天魔の目次】
1.雷神
不二楼の離れ屋に仮寓している秋山小兵衛の前の現れたのは、古狸そっくりの愛弟子・落合孫六だった。彼の用件は、旧主・脇坂淡路守安親の御膳試合で、八百長してよいかどうかの許しを得るためだった。
2.箱根細工
秋山大治郎は、父・小兵衛から、同門の剣客・横川彦五郎に手紙と見舞金を届けるよう頼まれる。大治郎は、小田原城下の道場を訪ねたが、横川彦五郎は箱根に湯治に行っているときく。 そこで大治郎は、箱根へと向かうのだが、その道中鋭い剣気をふき出す浪人とすれ違った。
3.夫婦浪人
「そうだひさしぶりに・・・」とあの鬼熊酒屋を訪れた秋山小兵衛。衝立障子の向こうで痴話げんかをしていたのは、中年の二人の浪人であった。一人はなかなかの男ぶり、もう一人はむさくるしい浪人であった。
この時小兵衛は、この二人の浪人が知り合いの仇討ちに関わってくるとは、知るよしもなかった。
4.天魔
縁側でまどろんでいる秋山小兵衛のもとに気配もなく現れた男は、笹目千代太郎であった。 小兵衛は、「とんでもない奴が、まいもどってきた。」としばらくの間、思案にふけってしまった。
5. 約束金二十両
いつものように稽古を終えた佐々木三冬は、神田明神境内の立て札に興味を持った。そして、秋山大治郎と共に立て札を立てた雲弘流・平内太兵衛のもとを訪れた。そこで彼らは、驚愕の剣技を見ることになる。
6. 鰻坊主
珍しく鬼熊酒屋で一人酒を飲んでいた秋山大治郎は、入ってきた旅の坊主を見た途端、顔をそむけ寝たふりをした。
坊主は、この家の前で金五十両を拾ったという。
それから、この店で酒を飲んでいた浪人三人が、勘定を払い出て行った。
さてこれから一体何が起こるのか?
7.突発
気に入っていた煙管をおはるの父にあげてしまった秋山小兵衛は、新しい物を煙管師・友五郎に頼もうとしていた。
しかしその頃、あれほど元気だった友五郎は、死にかけていた。一体何が?
8.老僧狂乱
田沼屋敷を出た秋山大治郎は、かつて世話になった老僧を見かけた。近づこうとしたその瞬間、老僧は川に身を投げた。
助け出された老僧を背負った大治郎は、町医者・小川宗哲のもとへと向かう。
「剣客商売 天魔」年譜
書籍名 | 発表月 | 表題 | 出版社 |
---|---|---|---|
剣客商売第四巻 天魔 | 1973年10月 | 雷神 | 新潮社、新潮文庫 |
剣客商売第四巻 天魔 | 1973年11月 | 箱根細工 | 新潮社、新潮文庫 |
剣客商売第四巻 天魔 | 1973年12月 | 夫婦浪人 | 新潮社、新潮文庫 |
剣客商売第四巻 天魔 | 1974年1月 | 天魔 | 新潮社、新潮文庫 |
剣客商売第四巻 天魔 | 1974年2月 | 約束金二十両 | 新潮社、新潮文庫 |
剣客商売第四巻 天魔 | 1974年3月 | 鰻坊主 | 新潮社、新潮文庫 |
剣客商売第四巻 天魔 | 1974年4月 | 突発 | 新潮社、新潮文庫 |
剣客商売第四巻 天魔 | 1974年5月 | 老僧狂乱 | 新潮社、新潮文庫 |