「剣客商売」全巻は、妻の嫁入り道具でした。この表紙は、当時の物です。
冷え冷えとした夜の闇の中、するどい太刀風が秋山小兵衛を襲う。
シリーズ第2弾も、池波正太郎の語り口と描かれる魅力的人間模様が見事ですね。
そして第2巻では、第1巻の登場人物、田沼家・御膳番の飯田平助の息子粂太郎が、秋山大治郎の唯一の門下生として登場しています。
「剣客商売」全編に流れる剣術家としての宿命が、なんとも哀れを誘います。
また第2巻でも、江戸の色々な食物が登場して、なんとも香ばしいかぎりです。
主な登場人物
■秋山小兵衛 かつての高名な剣客、今は隠居して郊外におはると住んでいる
■秋山大治郎 秋山小兵衛の息子。剣術道場を開いているが門弟は殆どいない
■おはる 十九歳、小兵衛の下女であったが小兵衛に手をつけられて妻となる
■佐々木三冬 老中・田沼意次の隠し子で、男装の女剣士。井関道場の四天王のひとり
■田沼意次 時の最高権力者で老中。三冬の実父
■弥七 小兵衛の剣術の弟子で、四谷伝馬町の御用聞き。女房は、料理屋を経営
■小川宗哲 小兵衛の友人で町医者
■傘屋の徳次郎 御用聞きの弥七の子分
剣客商売の目次
佐々木三冬が登場します。
1.鬼熊酒屋
ある日秋山小兵衛は、居酒屋「鬼熊」の名物親父・熊五郎が堤の下の草むらで苦しみもがいている姿を目撃してしまう。
熊五郎は、養女のおしん、その婿・文吉と三人で店を切り盛りしていた。
その後小兵衛は、熊五郎が店で血を吐いて倒れたのを見て、町医者の友人・小川宗哲を呼ぶのであった。
2.辻斬り
真っ暗闇の夜道を歩いていた秋山小兵衛は、突如辻斬りに襲われる。
難なく切り抜けた小兵衛が後を付けてみると、そこは大身旗本の御目付衆・永井十太夫の屋敷であった。
3.老虎
吾妻橋を渡っていた秋山大治郎は、行きかう人々の中に、なつかしい人の顔を見出した。
大治郎が諸国をまわった修行にはげんでいたころ、立ち寄った山本道場の山本孫助だった。
話をきくと、江戸見物に行くといって家を出た息子の源太郎が、母親の七回忌に戻ってこなかったらしい。
道場荒らしをしていたらしい源太郎の身に、何が起こったのだろうか。
4.悪い虫
八幡様の門前でごろつき浪人たちを簡単にあしらった秋山大治郎をつけてきたのは、辻売り鰻屋の又六だった。そして、苦労して貯めた金五両で十日のうちに強くして欲しいと言うのだが。
5.三冬の乳房
このところ、佐々木三冬は、父・田沼意次の屋敷に泊まることが多くなっていたのだが、ひさかたぶりに根岸の和泉屋の寮に帰った。
その帰り道、あやしい男たちが運ぶ一挺の駕籠が現れた。
この者たちを撃退して駕籠の中をあらためると、そこには目かくしをされ猿轡をかまされた山崎屋の娘がいるではないか。
三冬に頼まれた秋山小兵衛が調べてみると、不可解なことばかり出てくるのである。
6.妖怪・小雨坊
秋山小兵衛とおはる、そして大治郎のもとに、妖怪・小雨坊のような男が現れる。
小雨坊の正体がわからないなか、嶋岡礼蔵を弓で射殺した伊藤三介の父・彦大夫が、息子が江戸に戻ってきていることを伝えに来る。
果たして、小雨坊は何者なのか?
7.不二楼・蘭の間
妖怪・小雨坊に家を焼かれた秋山小兵衛が不二楼に身を寄せていた時、御家人・横川鉄五郎父子を殺害し金を奪うという話をきいてしまう。実は小兵衛、この横川鉄五郎からお金を借りて、その高利に苦しんだことがあった。
「剣客商売」第二巻 年譜
書籍名 | 発表月 | 表題 | 出版社 |
---|---|---|---|
剣客商売第二巻 辻斬り | 1972年8月 | 鬼熊酒屋 | 新潮社、新潮文庫 |
剣客商売第二巻 辻斬り | 1972年9月 | 辻斬り | 新潮社、新潮文庫 |
剣客商売第二巻 辻斬り | 1972年10月 | 老虎 | 新潮社、新潮文庫 |
剣客商売第二巻 辻斬り | 1972年11月 | 悪い虫 | 新潮社、新潮文庫 |
剣客商売第二巻 辻斬り | 1972年12月 | 三冬の乳房 | 新潮社、新潮文庫 |
剣客商売第二巻 辻斬り | 1973年1月 | 妖怪小雨坊 | 新潮社、新潮文庫 |
剣客商売第二巻 辻斬り | 1973年2月 | 不二楼・欄の間 | 新潮社、新潮文庫 |