妻の嫁入り道具「剣客商売 暗殺者」の表紙は、
どうしたらこうなる?というくらいボロボロでした💦
1985年1月刊行の本書、池波正太郎62歳の作品です。
前作から、作者の人生観が微妙に変化しているように感じます。
人は変わるものだと。
「人の世の出来事は、大半が、このような偶然によって運ばれてゆくもののようだ。」との池波正太郎の哲学により、色々な偶然が重なりつつ物語が進んでいきます。
優れた物語の書き手は、複数の話を同時進行させ最後に一つの結末に終息させます。
以前の物語に出てきた魅力的な脇役たちもまた、物語の進行に花を添えることとなります。
【主な登場人物】
■秋山小兵衛 かつての高名な剣客、今は隠居して郊外におはると住んでいる
■秋山大治郎 秋山小兵衛の息子。剣術道場を開いているが門弟は殆どいない
■おはる 小兵衛の下女であったが小兵衛に手をつけられて妻となる
■三冬 老中・田沼意次の隠し子で、女剣士。秋山大治郎の妻となる
■稲垣忠兵衛 奥山念流の遣い手。伊達家下屋敷で養生している
■浪川周蔵 剣客。無口な妻と娘と和気あいあいと暮らしている
■田沼意次 時の最高権力者で老中。三冬の実父
■与兵衛 秋山小兵衛のなじみの浅草・橋場の料亭・不二楼の亭主
■弥七 小兵衛の剣術の弟子で、四谷伝馬町の御用聞き。女房は、料理屋を経営
■傘屋の徳次郎 御用聞きの弥七の子分
【暗殺者の目次】
長編でネタバレになるので詳しく書きません。
1.浪人・浪川周蔵
香具師の元締めは、浪川周蔵に金五十両で殺しを依頼するが断られる。
秋山小兵衛は、二人の浪人に襲われる浪川周蔵を目撃しその凄腕に興味を持った。
2.蘭の間・隠し部屋
香具師の元締めは、萱野の亀右衛門であった。「仕掛人・藤枝梅安」に登場。
その亀右衛門はある晩刺客に襲われる。
一方小兵衛と親密な関係にある不二楼のあるじ与兵衛は、隠し部屋で頭巾をした立派な身なりの侍とよく訪れる小田切が「秋山大治郎」と口にするのを聞いて驚愕した。
3.風花の朝
不二楼のあるじの話を聞いて以来ふさぎ込んでいた小兵衛は、六十六歳になった。
そして小兵衛は、御用聞きの弥七と傘屋の徳次郎に協力を頼むのだった。
4. 頭巾の武士
浪川周蔵は、不二楼のあるじが隠し部屋で目撃した頭巾の侍と会った。そして殺しを頼まれるのであった。
その後、香具師の元締め亀右衛門から頼まれ一度は断った依頼を受けた。
その見返りに自分の妻と子を安全な場所に隠してもらうことにしたのだった。
5. 忍び返しの高い堀
久しぶりに不二楼に現れた小田切を弥七と徳次郎の二人は、懸命に尾行し忍び返しがついた異常に高い堀の屋敷に入ったのを見届けた。
6.墓参の日
弥七は、顔見知りの御用聞き新蔵を訪ねその怪しい屋敷の持ち主を知る。
それを聞いた小兵衛は、自分の門人であり幕府の奥御祐筆をつとめていた滝口彦右衛門を訪ねる。
7.血闘
陰謀に巻き込まれた浪川周蔵、そして秋山父子、さあどうする!?
「剣客商売 暗殺者」年譜
書籍名 | 発表月 | 表題 | 出版社 |
---|---|---|---|
剣客商売第十四巻 暗殺者 | 1984年4月 | 暗殺者(長編) | 新潮社、新潮文庫 |