池波正太郎「剣客商売 狂乱」剣客商売第八巻レビュー!おのれの強さとは!?

おのれの強さは他人に見せるものではない。おのれに見せるものよ。このことを、ゆめゆめ忘れるな

ハマー

そして池波正太郎は、ひとりひとりの登場を愛情をこめて丹念に描きます。

秋山小兵衛を通して、池波正太郎の人生観を述べているようです。


ここが、池波正太郎の世界の魅力ですね。

この巻から、同時期に書かれた「仕掛人・藤枝梅安」や「鬼平犯科帳」の世界とリンクしていきます。
ホラーの帝王と呼ばれるスティーブン・キングも、いくつかの小説の舞台や設定につながりがあります。彼らの頭の中には、彼ら自身の世界が見事に構築されているようです。ここが、並みの作家と違うところですね。

目次

【主な登場人物】

■秋山小兵衛  かつての高名な剣客、今は隠居して郊外におはると住んでいる

■秋山大治郎  秋山小兵衛の息子。剣術道場を開いているが門弟は殆どいない

■おはる    小兵衛の下女であったが小兵衛に手をつけられて妻となる

■三冬   老中・田沼意次の隠し子で、女剣士。秋山大治郎の妻となる。

■飯田粂太郎  飯田平助の子。秋山大治郎の唯一の門人

■田沼意次   時の最高権力者で老中。三冬の実父

■生島次郎大夫 田沼家の用人

■弥七     小兵衛の剣術の弟子で、四谷伝馬町の御用聞き。女房は、料理屋を経営

■文蔵     弥七と親交がある御用聞き

■小川宗哲   小兵衛の友人で町医者

■傘屋の徳次郎 御用聞きの弥七の子分

■又六     鰻の辻売りをしている。素直で実直な男

■杉原秀    杉原左内の娘で、根岸流手裏剣の達人

■植村友之助  かつて秋山小兵衛の弟子で、逸材といわれた男

■為七     知的障害の中年のかわいそうな男

【狂乱の目次】

1.毒婦

「たまには、元長にでも行ってみようか。」と、おはると一緒に元長を訪れた秋山小兵衛。
その時階下では、大工の由次郎が元長の主人・長次を殴りつけていた。その理由は、由次郎の嫁のおきよをかくまっていたからだった。
その場を治めた小兵衛は、由次郎から話をきいてみた。
次の日、小兵衛の後をつけていたのは、意外にも元長の長次であった。彼の話では、おきよは、とんでもない女だという。

2.狐雨

虫の知らせか、田沼道場の稽古を終えた秋山大治郎は、ふと杉本又太郎の顔が頭に浮かび、杉本道場に向かうことにした。その杉本道場では、何者かが、杉本又太郎に今にも刃を突き入れようとしていた。心配する大治郎に、又太郎は、大丈夫だという。
実は又太郎は、元の主人・松平修理之助の屋敷から、相思相愛の息女・小枝を引っさらっていたのだった。
その剣術が弱い道場主の又太郎が、突然強くなった。一体何が起こったのか?

3.狂乱

久しぶりに牛堀九万之助の道場を訪れた秋山小兵衛は、牛堀道場の高弟達を次々になぎ倒す石山甚市を見た。石山は、牛堀九万之助に試合を申し込むが、とても勝てぬと悟り退出する。
彼は藤堂家の足軽であったが、今は大身旗本・本多丹波守の家人となっていた。身分が低いにもかかわらず剣術が強すぎるため、皆から疎まれ孤独になっていた。彼の鬱屈してした精神は、だんだんと凶暴さを増していくのであった。

4.仁三郎の顔

傘屋の徳次郎は、岩戸の繁蔵から盗賊の黒羽の仁三郎が、江戸に戻ってきていることを聞いた。黒羽の仁三郎は、かつて弥七の下で働いていた佐平に、恨みをいだいている。

一方奇妙な縁で、秋山大治郎は、この黒羽の仁三郎を以前助けたことがあった。

5.女と男

秋山小兵衛は、船着き場で、女を無理やり連れ去ろうとしていた三人の侍から、女を助けた。
その後またその女を見かけた時、女は薄汚れた浪人に強引に手を引かれて、木立の中に入っていった。よくよく見ると、その瘦せこけた浪人は、かつて小兵衛のもとで修業をしていた紅顔の少年・高瀬照太郎だと気付き、愕然とする。

6. 秋の炬燵

手裏剣の名手・杉原秀は、秋山小兵衛宅に向かっていた時、殺されそうになっていた幼い男の子を助けた。
この殺しを仕掛けたのは、香具師の元締・白金の徳蔵であったが、なぜこの幼い男の子の命を狙ったのであろうか。

「剣客商売 狂乱」年譜

書籍名発表月表題出版社
剣客商売第八巻 狂乱1976年9月毒婦新潮社、新潮文庫
剣客商売第八巻 狂乱1976年10月狐雨新潮社、新潮文庫
剣客商売第八巻 狂乱1976年11月狂乱新潮社、新潮文庫
剣客商売第八巻 狂乱1976年12月仁三郎の顔新潮社、新潮文庫
剣客商売第八巻 狂乱1977年1月女と男新潮社、新潮文庫
剣客商売第八巻 狂乱1977年2月秋の炬燵新潮社、新潮文庫
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